感想/クリスティアン・ツィマーマン演奏会2012
忘れないうちに感想を書いておかねば。
12月8日(土)、所沢ミューズで行われたクリスティアン・ツィマーマンのリサイタルに出かけた。今年のラストコンサートだ。
ツィメルマンは、2009年の来日リサイタルも所沢ミューズで聴いた。所沢市が助成をしているのか、S席が7000円と、サントリーホールやオペラシティ等、都内のホールで開かれるリサイタルよりもチケット代がリーズナブル。シューボックス型の素敵なホールなので、私は所沢公演をおすすめします(ただし、周囲には気の効いたレストランがないので、アフターコンサートの楽しみは今ひとつ)。
下がプログラム。
ドビュッシー:
版画
1.パゴダ 2.グラナダの夕べ 3.雨の庭
ドビュッシー:
前奏曲集 第1集 より
2.帆 12.吟遊詩 6.雪の上の足跡 8.亜麻色の髪の乙女
10.沈める寺 7.西風の見たもの
シマノフスキ:
3つの前奏曲(「9つの前奏曲 作品1」より)
ブラームス:
ピアノ・ソナタ 第2番 嬰へ短調 作品 2
今回のリサイタルはプログラム変更があった。チケットを購入した際は、もともとドビュッシーの練習曲全曲というプログラムだった。出かける前は「前奏曲よりも練習曲を聴いてみたかったのに」と思っていた。
また、ドビュッシーの前奏曲 第1集は12曲からなり、たいていのリサイタルでは全曲演奏される。今回はその中から6曲。こちらも出かける前は「全曲、演奏すればいいのに」と思っていた。しかも、曲の順序を2番→12番→6番と入れ替えている。まぁ、ツィメルマンクラスになると、深い意図があってこの順番にしたのだろう‥‥。
さて、本番。真っ白の髪のツィマーマンが登場。
ドビュッシーの前奏曲、実際に演奏を目の前にすると、比較的遅めのテンポで、一曲一曲が凄まじい集中力で「空間が作られていく」。ピアノを弾くというよりも、「ホール全体に音の空間を作っていく」という表現がふさわしい。
聴衆の集中力も高い。演奏する側も聴く側も、一曲にかける重力がハンパない。演奏に息を飲み、一曲を終えるごとにツィメルマンも聴衆も「ふぅ」という息を吐く声が聞こえた。この緊張感で12曲を聴くのはしんどい。6曲でも十分だった。
ただ、細かいところを言うと、「帆」や「亜麻色の髪の乙女」の“間”の味わい、彼独特のウィットに富んだ「吟遊詩人」は絶品だったが、「沈める寺」の低音が伸びず「あれ?」と思った。この曲は立体感が今ひとつ感じられなかった。
全プログラムの中で、一番よかったのは、シマノフスキの前奏曲。“素人”が弾くと、甘くロマンティックな「名曲アルバム」的演奏になりがちだが、音楽の奥の奥に秘められている深い情感が伝わってきた。
メインディッシュのブラームスのソナタは、その前のシマノフスキがあまりに逸品すぎて、まぁ、本当に素晴らしいのだけど印象が薄くなってしまった。
例のごとくアンコールはなし。期待を裏切らないリサイタルだった。
まぁ、一流のピアニストってのは、「ピアノを弾く」というよりも、ピアノという道具を使って、ホールに「一瞬の音空間を作る」という、インスタレーションの芸術家なんだな、と改めて思った。
ディスカッション
コメント一覧
暗譜の演奏でした?
こちらでは視譜で。
しかも「う~~ん」と言う感じでした。
私ははるか後ろでしたがうちのあほ息子は何万円もする席を「ファン」にプレゼントされ、息遣いが聞こえる席で鑑賞しました。
でも・・・翌週のチッコリーニの方がずっとよかった!って言っていましたわ。