ボローニャ歌劇場『カルメン』、斬新演出に心踊った
金曜、東京文化会館でのボローニャ歌劇場公演、ビゼー「カルメン」を観てまいりました。
6月のメトロポリタン歌劇場来日公演に続き、主役級キャストのキャンセルが相次いだ今回の公演。フローレス→シラクーザ、ガザーレ→サルシ、リチートラ→アロニカ、カウフマン→アルバレスと、予定のテノール陣が総とっかえ状態で、オペラファンは大ブーイング。
ただ、リチートラは8月末にスクーター事故に遭い、9月5日に逝去。フローレスは、海水を飲みこみ激しく咳き込んだ時に声帯の開口部分の細い血管を傷つけてしまった、と。なんだか呪われた公演のようです。
総統閣下も、“相当”お怒りのようで (←ヒス将軍、キミはバカかね)
さて、オペラは何年ぶりだろう。もともとワーグナーは大好きなのですが、少なくともピアノを再開した2008年以降は、観劇に出かけていない気がします。そんな私が、この公演に出かけてみようと思ったのは、アンドレイ・ジャガルスによる演出が楽しそうだったからです。
19世紀スペインの舞台を、20世紀、カストロ政権化のキューバに置き換えたユニークな演出。タバコ工場は葉巻工場に。2幕の酒場でフラメンコではなくサルサを踊り、3幕の密輸仲間は1960年代のアメ車で登場。そして、エスカミーリョは闘牛士ではなくボクサー‥‥。
この演出に惹かれたわけです。「カルメン」は、思わず口ずさみたくなるメロディー、分かりやすいストーリーだけに、そのベースの上に奇抜な演出が生きていました。
歌手もよかったですよ。カルメン役のニーノ・スルグラーザは、グルジア出身で、黒髪の小悪魔的な風貌にぴったりでしたし、ドン・ホセ役のマルセロ・アルバレスも、どうしようもない困った男ぶりが出ていて、私はブラヴォーでした。
メロディーは美しいし、演出は楽しいし、歌手もよかったし。
でもね‥‥「カルメン」のストーリーって、冷静に考えて「性悪女とストーカー男の末路」という『女性自身』『女性セブン』のゴシップ記事並みで、どうも感情移入できないんだよな。
今回、「病弱薄幸系美女好き」の共通項を持つ30代男子と、男二人で観に行ったのですが、「ドン・ホセ、バカじゃないの。いらつくよなー」なんて、ブツブツいいながら、帰路につきました。