グスタフ・レオンハルトのチェンバロ演奏会へ
今日は、東京文化会館でのチェンバロの巨匠、グスタフ・レオンハルトのリサイタルに出かけた。彼の音楽との出会いは10代にさかのぼる。なれそめはこちら。
さて、チェンバロのリサイタルは趣きがあっていい。ピアノのリサイタルは、ともすれば音楽がステージから聴衆に向かってくるイメージだけど、チェンバロリサイタルは聴衆みんなで音楽を囲んで耳を傾けるイメージ。ピアノリサイタルが「演劇」なら、チェンバロリサイタルは「朗読会」だろうか。
また、チェンバリストは楽譜を見ながら演奏するので、一曲を終えてペラっと楽譜をめくる姿は「さてさて次は何を弾きましょうかね」なんて感じで微笑ましいし、曲と曲の合間に、ちょこっと調律をするのもライブ本来の魅力がある。東京文化会館小ホールのシックな雰囲気も、チェンバロリサイタルにとてもマッチしていた。
今日のプログラムは下記。
リッター: スウェーデン王カール11世の死に寄せるアルマンド(1697)
ラインケン: トッカータ ト短調
パーセル: 組曲 ニ短調 (アルマン、クーラン、ホーンパイプ)
クロフト: グラウンド ハ短調
ベーム: コラール・パルティータ「ああいかにはかなき、ああいかに虚しき」
ベーム: 組曲 ヘ短調 (アルマンド、クーラント、サラバンド)
ラモー: やさしいプラント/ミューズたちの対話/サラバンド/メヌエット/エンハーモニック
フォルクレ: 組曲 第5番より ラモー/レオン/モンティニ/シルヴァ/ビュイッソン
ラモー以外は初めて耳にする曲ばかり。
実は、強風のためか放射線のためか、朝から体調が思わしくなく、会社でフラフラしていた。ホールの座席についても何だか夢うつつ。ベームの組曲あたりは深海に潜ったように気持ちがよく、頭が半分寝ていた。
ところが、ベームからラモーに移ると、チェンバロの音色がまったく変わってびっくり。後半のフォルクレは緊張感漂う演奏で、瞳パッチリになった。
マエストロ・レオンハルトの演奏は本当にすごかった。チェンバロというのは撥音楽器で、上段と下段で二種類の大きさしか出せない仕組みなのに、音楽はダイナミック。そして何よりカンタービレ。
特に、アンコールのバッハの無伴奏チェロ組曲 第6番よりサラバンドは、まるで弦楽器のようだった。カンタービレなチェンバロ、この感動は言葉にできないよ。
ちなみに、今日5月30日はマエストロの83歳の誕生日。もう一度機会があれば、ベストな体調で演奏を聴いてみたい。