衣食足りて「礼楽」を知る
中国の春秋時代、斉の国の宰相・管仲の言葉。「生活に余裕ができて、初めて礼儀や節度をわきまえられるようになる」という意味である。
礼節だけでなく、文化とはそういうものだろう。日々の稼ぎにキュウキュウとした暮らしから、洗練された文化を創造するのは難しい。
パパの会社の業績が向上すれば、所得は増えて、娘にピアノもバレエも、習い事をさせたくなる。逆に業績が悪化すれば年収は下がり、ピアノかバレエかどちらか一つにさせたくなる。
ま、そういうところだ。
ところで、古代中国において、儒家は「礼楽」と称し、音楽を礼節と並んで重要視した。社会秩序を定める“礼”と、人々の心を感化する“楽”をもって、文明の基礎にしようという考え。
“礼”と“楽”が満ちる家庭、確かに理想である。
だが、衣食足りねば、「礼楽」はやっぱり遠い……。
うーむ。
はたらけど はたらけど
猶わが生活(くらし)楽にならざり
ぢつと手を見る石川啄木