退屈な卒業式を「旅立ちの日に」が救った
より気分を滅入らせたのが来賓の数々。卒業生140人に、市会議員やら交通安全協会やら消防団やら民生委員やら学校評議員やら“育てる会”やら、なんで40人も来るの? 多すぎだろ。40人が、タラタラと一人ひとり日の丸と教職員に挨拶しながら入場するので、なかなか式が始まらない。
で、その40人が揃いもそろって、じいさんばかり。このじいさんたちのスピーチが社交辞令と説教くさくて、正直、イライラした。
「風さわやかな‥春の日に‥桜の‥つぼみは萌え‥」、外は大雨だろ!って。
60歳過ぎたジジイが、政治と教育を仕切るから、日本経済はグローバルな競争力をなくしていくのだ、と、痛切に感じだ。
退屈なスピーチやら来賓紹介が30分あまりえんえんと続くので、子供たちはモジモジしだした。だが、キミたちの態度はまったくもって正しい! これらのスピーチはキミたちのものではない、ジジイの自己顕示欲の発露の場なんだから。
ただ一人、最後に挨拶をした保護者代表のお母さんだけ、「おっ!」と思えるスピーチだった。日ごろ、ちゃんと子供を見ているから、エピソードが具体的で心に響くのだ。市会議員も民生委員も、子供に接することなんて実際ないんでしょうに。
と、まぁ、式の前半は、かなりうんざりしていたのだが、卒業生の合唱が始まると「おーっ!」と目が覚めた。
「旅立ちの日に」。秩父の中学の元校長先生が、定年の年の卒業式で生徒のために作った歌。たった一度の卒業式のための曲が、いまや全国の卒業式で歌われるようになった奇跡の曲だ。
子供たちの合唱も素晴らしかったが。女の子のピアノ伴奏がとびきりよかった。感動的に上手かった。この曲の前に、音楽の先生が校歌の伴奏を弾いたのだけど、音楽の先生よりはるかにピアノが上手かった。相当、ピアノの先生から特訓を受けたんだろうな。
キミのピアノ伴奏は、今日のとびきり寒い卒業式の印象を変えたよ。ありがとう。