アルバン・ベルク弦楽四重奏団の思い出
私、中学三年の頃には、すでに相当マニアなクラシック音楽ファンでしたが、クラスメートで親友のS君は、私をはるかに上回る知識と視聴数を誇る少年でした。今でいう“クラオタ”です。ワーグナーの楽劇も、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲も、私が初めて接したのはS君の勧めでした。
彼の父親も、クラシック音楽ファンで、この親にしてこの息子ありという感じでした。彼の家の応接室には、でっかいスピーカーを備えたステレオとともに、沢山のLPレコードが収納された4~5段はある棚がありました。そこには、グールドのほぼ全てのアルバムのコレクションがあり、それはそれはS君の家庭がうらやましかったのです。
グールドの平均律やイギリス組曲はLP二枚組で、当時は5000円ほどしたので、とても中学生のお小遣いでは手が出せませんでした。私はこれ幸いと、S宅で片っ端からカセットテープに録音してもらいました。
そんな彼のお気に入りのアーティストは、アルバン・ベルク弦楽四重奏団でした。ベートーヴェンとバルトークの弦楽四重奏の素晴らしさを低い声で語るとき、彼の瞳は鈍い光を放つのです。
ベートーヴェンの後期作品はともかく、バルトークの弦楽四重奏は、ガラスをこすったようにキッキキッキと鳴る感じがして、私はちょっとついていけませんでした。が、「Sが素晴らしい!というのだから素晴らしいのだろう」と、自分に言い聞かせつつ、最後まで我慢して聴いたものです。
てなわけで、私にとって室内楽といえばアルバン・ベルク弦楽四重奏団!と刷り込まれてしまったのですが、なんと、昨年、解散したのですね。精緻なアンサンブル、一度、生演奏を聴いておきたかった。
下はS君おすすめ、アルバン・ベルク弦楽四重奏団によるベートーヴェンの「大フーガ op.133」。いやー、すごい演奏ですね。こんなのライブで聴いたら、ヘトヘトになりそうです。
前半
後半
うーむ、S君、15歳にして精神的に老成してはいたが、こんなの毎晩、家で聴いていたのか‥‥。
ちなみに、彼は私と違って、エスカレーター式の大学付属校に入ってもしっかりと勉強をして、その後、旧帝大系国立大学の医学部に進学し、現在、外科医をやっています。
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