なぜ、会社でピアノを内緒にするのか?
先日のピティナステップで私がステージでの写真撮影を固辞したことについて、ちょいと補足説明をします。よく、不思議に思われるので。
昨日のピティナステップで、もう一人、会社員の男性がいました。ホールを出る際、「私も会社の人間に写真を発見されたとき、人違いです!で押し切りましたよ」と、お声がけいただきました。で、「やっぱりピアノは、会社には内緒ですよね」と深くうなづき合いました。これ、男性サラリーマン特有の悩みだと思います。
ピアノで仕事の足を引っ張られたくない
ピアノにしろ、テニスにしろ、茶道にしろ、男性には自分の趣味を会社で積極的にオープンにする人と、人知れずこっそりやる人、2タイプがいます。私は会社で、クラシック音楽が好きな数人にはピアノのことを話をしていますが、基本的に内緒です。
なぜ? それは、ピアノで仕事の足を引っ張られたくないからです。
会社組織の中で、自分のやっていることをすべてのスタッフに認めてもらうことは本当に難しいです。何か新しいことを始めたり、結果を出すため多少乱暴な手段に訴えると、必ずアンチ派、懐疑派は現れるもの。
私も40歳を過ぎて、コンセンサスを重視するようになりましたが、30代中盤はアンチ派、懐疑派には目もくれませんでした。20%の理解者がいて、5%の少数精鋭メンバーで突っ走れば、たいていのことは押し通せると思っていました。
よく、自分のやりたいことが会社に理解してもらえない、と嘆いている人がいますが、私に言わせると“組織のメカニズム”をわかっていないだけです。私は、これまで四つの会社で働きましたが、会社組織って、力の入れるポイントと支点(キーパーソン)さえ把握すれば、テコの原理でススっと動くものです。要領がいいとは、よく言われますが‥‥。
ただ、要領の悪い人が、仕事の内実に関わる反対意見や懐疑意見を持つのはいいものの、内実に関係のないことで、足を引っ張るような人が中にいたりします。
例えば、すばらしい事業開拓能力を持っているのに、社内不倫で女性スタッフの反発を受けて、足元をすくわれた男性がいました。
残念なことに、仕事の成果に関係のないネガティブな空気が、えてして人の評価に影響を与えますから。
ピアノは趣味というより「不倫」に近い
ピアノが趣味だったら、会社のスタッフに知られてもいいです。
ですが、私のピアノに対する姿勢は趣味よりも不倫に近いです。自分ではそんなに思っていないのですが、時間もおカネもバランスを欠いていると周囲の人によく言われます。
いま、セクシーな女性とピアノの二者択一なら、間違いなくピアノを選びますね(20代の私なら、もちろん女性だろうけど)。先日、友人から「終わりがない分、不倫よりやっかいだよね」と苦笑されました。その通りだと思います。
会社には業績がいい部門もあれば、悪い部門もあります。営業成績がいい年もあれば、悪い年もあります。
状況がいいときは、誰も突っ込んだりしないです。でも、状況が悪くなると、「あの人は業績がよくないのに、会社を早く出てピアノばかり弾いている」と言われかねません。
評価は他人が下すものだから
もちろん、言う奴には言わしておけばよい、という考え方もあります。でもね、役員、部長クラスになると私は違うと思うのです。自分の評価が、部門の評価に影響を与えますから。で、部門の評価が、スタッフのお給料に間接的にしろ影響を与える可能性があるのです。
評価というのは、自分が下すものじゃないです。他人が下すもの。私は、この厳然たる事実に気がついたのが、結構早かった。20代半ばくらいだったっけ。
自己評価をやめると、会社でのストレスの大部分は解消されるのです。たいていの会社員は、自己評価と他者評価のギャップに悩んで、人事考課や給与査定の際にモチベーションを下げるのです。……これ、ピアノでもおすすめしますよ。自己評価をやめると、コンクールでも楽になるはず。
で、えてして会社での評価とは、言い方、容姿、男女関係等、仕事の成果に関係のないファクターに影響を受けるもの、と、私は冷徹に見てます。すべてじゃないけど。
業績が芳しくない子会社の役員が、会社帰りにピアノを弾いていることが知られたら、ここぞとばかりに陰口をたたく人は必ず現れるのです。もちろん、私が人格者でないことも理由の一つでしょうが……。
というわけで、ピアノのためにも、仕事をやりやすくするためにも、人間関係は分けておいた方がいいと思っています。