ピティナステップ、新百合ヶ丘へ

2014年5月26日

ピティナステップ新百合ヶ丘
ピティナステップの参加も今回で5回目。新百合ヶ丘のステップは、昨年に続いて2回目。今日、演奏するのはJ.S.バッハ「トッカータ ホ短調 BWV914」。

今回は、これまでと違って開始時間が朝10時45分と早い。ほとんどのピティナステップは、朝一番から年少参加者の演奏で始まり、グランミューズ(社会人)の演奏は夜6時以降になる。今回は参加者が多く、2日間にまたがったためか、私は2日目の朝一番のステージだった。こちらが今日のプログラム

早めに到着。新百合ヶ丘の町をプラプラ

受付開始は10時15分。9時20分すぎに新宿から小田急線の快速に乗ると、9時45分には新百合ヶ丘駅に着いてしまった。新百合ヶ丘って、都心からこんなに近かったっけ。仕方がないので、30分ほど駅周囲をプラプラ散歩して時間をつぶす。日向ぼっこしている鳩、インカのピラミッドのような不思議なオブジェ、港の倉庫のような昭和音大‥‥暇にまかせて目を凝らすと、いろんなものが目に入った。
ピティナステップ新百合ヶ丘
10時15分ジャストに、会場の昭和音大北校舎「ラ・サーラ・スカラ」へ。私がほぼ一番乗り。その後、ポツポツとグランミューズ組の参加者が現れた。

座席に座っていると、「鍵盤うさぎさんですか?」と声がかかった(ブログをやっていると、コンペでもステップでもお声掛けいただくことが多い)。

「西の魔女」との出会い

振り返ると、ウルトラ上品な老婦人が立っている。中原淳一の『それいゆ』に出てくるイラストの少女が古希を迎えたら?って感じの女性だ。あるいは“西の魔女”‥‥。

西の魔女「ブログを見て、近くだから聴きに来ました」
鍵盤うさぎ「え! 恐縮です‥‥」
西の魔女「私も、いま同じ曲やっているんですよ」

と、トッカータの楽譜を見せていただいた。私の楽譜は春秋社の井口基成の校訂版だが、西の魔女は原典版をお持ちだった。

西の魔女「私、手が小さいもので、なかなか弾きづらいのです」
鍵盤うさぎ「私も、実は手が小さいんです」

お互いの掌を見せ合った。一瞬、映画『ハウルの動く城』のワンシーンを思い出し、温かい気持ちになった。

西の魔女「演奏、楽しみにしていますよ」
鍵盤うさぎ「いえいえ、今日はまだ仕上がっていないんで」

なんて、やりとりをしているうちに司会が開始を告げた。
ピティナステップ新百合ヶ丘
グランミューズ組の参加者は6人、私は3番目の演奏だった。

結果は、「ところどころ崖崩れを起こし、寸断されてしまった高速道路」みたいなトッカータだった。自己採点は48点。

ま、初めて人前で弾くので、今日はクローズドベータ版という位置づけで多少の崩れは許容範囲だったが、想定よりも悪すぎた。各所でミスタッチを連発した。

実は、今日のステップはうちの師匠主催で、タイトルにKatsukoという名前まで冠されている。演奏を終えてアドバイザー席の師匠をチラっと見ると、「ありゃりゃ」って表情をされているような‥‥あちゃ、すみません。

私はステージでの演奏が実力値だと思っている。一人、部屋でどんなにうまく弾けても、満足はできない。演奏って、弾く人と聴く人のコミュニケーションだし。

敗因の分析をば

今回の敗因は明快。それは、暗譜で弾くか、読譜で弾くか、どっちもつかず中途半端になってしまったこと。

トッカータ、暗譜がまだまだ甘い状態で自信がなかった。今年2月、ステップでバッハを弾いた際、記憶がぶっ飛んでまったく弾けなくなることがあった。だから、今回、安全策を採って読譜でのぞん
だ。おかげで、ステージに出るまでは、暗譜で弾くときよりも緊張せずに出番を待てた。

ところが、いざステージに出て弾き始めると、何だか楽譜ばかりを目で追ってしまい、視覚と触角が離れてしまったような嫌なモードに。おかげで、普段崩れない箇所でも、ころころとミスタッチを連発してしまったのだ‥‥。

今回の教訓。

暗譜と決めたら、完全に暗譜した状態になるまでステージに立ってはダメだ。

実際は2ヶ月前に参加申し込みが必要なので、暗譜が完成してからだとずいぶん先になってしまうのだが。

逆に読譜で弾くなら、楽譜に目を凝らし、完全にブラインドタッチで弾かないとだめだ

暗譜演奏は読譜演奏の上位にあるのではない、それぞれ別のスタイルなのだ。

そういえば、ステップに50回以上参加されているマイミクさんが「ステップは防災訓練のようなもの」と日記で書かれているのを見て深く共感したことがある。私にとって、ステップは「本番で事故を起こさないための予行演習」という考え方がしっくりくる。

読譜で弾いた今日のバッハは、マニュアルを見ながら防災訓練を行ったようなものだな。次回の防災訓練では、マニュアル抜きで演奏しよう!と心に決めた。

ところで、今回のアドバイザーは、師匠・金子勝子先生ほか、江口文子先生、江夏範明先生の三人。重量級の布陣だった。以下、講評の要約です。「忌憚のない意見をお聞かせください」と最初にコメントでお願いしたのだけど、何だかちょい甘めな気が‥‥。

■ 江口文子先生
評価:Great
音色も良く、音楽的に素晴らしい演奏です。曲全体がひとつの流れになると、さらに統一感がある表現になると思います。

■ 江夏範明先生
評価:Fine
意思の通った響きのある音で自身の音楽を伝える演奏です。指先の不揃いからくる音質のムラがバッハには痛いので、日ごろからゆっくりのテンポで音をよく聞き、頭でイメージした音と指先が連動する練習をつんでください。とても良いところとミスで崩れるところが混在でしたが、全体的に心のある演奏でした。

■ 金子勝子先生
評価:Great
あがってしまいましたか? 左手のテーマがもう少し響くとよかったです。アダージオは、もう少し次から次へと場面をイメージして。左手をもう少ししっかりと語れるように! フーガは出だしがモタモタしてしまったが惜しいです。今後、もう少し左手を取り出して練習してください。

最後に、今回ステップ参加が五回目なので継続表彰というのを受けた。ドレスを着た少女とステージに上がるのは、やっぱり恥ずかしい。表彰後、アドバイザーの先生と記念撮影ってことになったのだが、「すいません、写真は勘弁してください」と固辞。ピティナのホームページによく写真が載っているじゃないですか。もし、会社や取引先のスタッフに発見されたら、後々面倒なことになるし。

ただ、大御所・江口文子先生に「ぜひ一緒に撮りましょうよ!」とお声がけいただき、断るわけにもいかず、結局、記念撮影に収まった。
講評用紙をもらうと昼1時過ぎ。いつもよりとても早い時間に終わって、不思議な感じ。新百合ヶ丘駅構内のベーカリーで、遅めのランチを食べて帰路についた。

追伸:
“西の魔女”さま、お名前だけでも聞いておけばよかった‥‥と後悔しております。もし、ブログをご覧になりましたら、下の「非公開コメント」で書き込みいただけるとうれしいです。


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