芸術の「事業仕分け」を家計として考える
クラシック音楽を好きな方は、昨日、書いた記事を不快に思われた方が多数いると思います。私はそれを承知で書きました。あえて「損益計算」という、芸術にそぐわない言葉を使ったのも、違った視点で事業助成金というものを捉えてほしいからです。今日は、もう一つ違った視点で書いてみます。
今年度の日本の税収は37兆円くらいになるそうです。ちなみに、昨年は53兆円ほどありました。家計でいうと、一家の年収が530万円くらいあったのが、会社の業績不振により370万円に減ってしまったのです。
一方、歳出は今年度が83兆円ですが、民主党政権は来年度、99兆円で考えているようです。家計に直すと、今年は年収530万円想定(実際は370万円)だったのに830万円支出したことになります。で、恐ろしいことに、今年の収入が実質370万円だったのに、来年は990万円の支出を予定しているのです。
さらに借金が865兆円ですから、住宅、教育等、なんと8650万円!のローンを抱えていることになります。
これが一家の現状です。このままでは早晩、この一家の父親と母親は信用を失い、結果自己破産するでしょう。国家レベルで「信用を失う」とは具体的にどういうことでしょう? いろんな事態が考えられますが、日本円の価値が暴落し、資源のない日本では物価は暴騰。今の程度どころではない大不況がやってきて、失業率10%超え‥‥と、私は予想します。
もし、自分が一家の大黒柱だったら、年収370万円で支出990万円、ローン残高8650万円でもよし、とするでしょうか。私なら、家庭のこの状況を何とか打開したいです。
では、一家をこんな風に例えてみます。
「日本」さん一家は5人家族です。
お父さん……中堅電機メーカーの正社員です。
お母さん……主婦。パートとお婆さんの介護で大変です。
お婆さん……寝たきりで、要介護状態です。
息子……大学生。クラブはラグビー部です。北米に留学したいと思っています。
娘……ピアノが大好きで、来年、私立音大に入学します。
お父さんは、昨年まで世帯年収530万円でしたが、昨年来の不況と中国・韓国メーカーとの価格競争による業績不振で、年収が370万円になってしまいました。バブルの頃に建てた一戸建てのほか、自動車、教育ローンが8650万円残ってます。
私なら、まずこうします。
お婆さんの介護費用に手をつけるわけにはいけません。何といっても、私たちを育ててくれたわけですから。できれば、いい病院での手厚い介護を与えてあげたいと思います。
息子には「ラグビー部の費用は負担するけど、留学は国費の審査を受けるか、カナダのワーキングホリデーを利用してくれ」と頼みます。卒業後は必ず就職をして、教育ローン返済の一部負担を求めます。
娘には「ピアノが大好きなら、頑張ってピアノを練習しろ。ただし、音大卒業後のビジョンを考えろ」と指導します。
私がいう「音楽振興助成金のリターン」とは、娘の“音大卒業後のビジョン”にほかなりません。そして、国費を使う以上は、たとえリターンが「豊かな心」であっても予算執行調査というレビューが求められるのです。
しつこいですが、日本国民は年収370万円、支出990万円、ローン残債8650万円の一家に住む家族なのです。
追伸:
そういえば、こんなこと、以前にありました。
「公共事業」と「官僚主導」の思い出