ショパンコンクール in ASIA 宇都宮予選の長い一日
忘れないうちに、先週土曜に参加したショパン国際コンクール in ASIA 宇都宮予選の報告を書いておこう。
この日は本当に盛りだくさんだった。学生時代の友人が広島から東京に出てきたので、正午から池袋でイタリアンランチ。彼の仕事は広島県警の少年育成官。昔でいう「補導」である。20年を経て、すっかり顔つき&ファッションが警察業界の人になっていた。
せっかくなので、ランチ後に腐女子のメッカ、池袋の乙女ロードを案内する。コスプレイベントや同人誌のコミケのチラシを、参考資料として興味深くカバンに詰め込んでいた。その後、14時30分から池袋のレンタルスタジオで、本番前の指ならしをしようと予約をしておいたので、練習に付き合ってもらう。私のノクターンの効果はてきめんで、10分もしないうちに彼は深い眠りに落ちた。
一時間練習をした後、池袋駅で友人と別れ、15時40分すぎの湘南新宿ライナーで宇都宮に向かう。私にとってコンクールといえば、なぜかいつも湘南新宿ライナーだ。
途中、小金井駅で乗り換えて宇都宮まで約2時間。大宮駅までは満員電車だったが、埼玉県を抜けて古河駅をすぎる頃には車内はガラガラに。日も暮れて、車内はとても寒くなった。持ってきたスキー用の手袋をつけて、手が冷えないようにする。小金井駅で乗り換えると、そこから先の電車のドアはボタンを押して手動で開閉するタイプ。一瞬、使用法が分からずにたじろいだ。
18時15分前に宇都宮駅に到着。あたりはすでに真っ暗だった。爪を切るのを忘れたので、駅構内のマツモトキヨシで爪きりを買って、県庁前方面行きのバスに乗り込む。コンクール予選会場の栃木県総合文化センターは駅からバスで10分ほど、栃木県庁近くにある。降り間違えないように、車内のアナウンスを耳をすませつつ、両手の爪を切った。
県庁前バス停から3分ほど歩いて栃木県総合文化センターに到着。早速、受付で参加票を提出すると、分厚いパンフレット、というより本が手渡された。後で見てびっくりしたのだが、参加者全員の顔写真で演奏曲目がびっしりと載っている。この本、果たしてどんな意味あるのだろう? 審査員、役員のプロフィールだけで十分な気がするのだが。本にお金をかけるよりも、ホームページにお金をかけた方がよい気がするのだが。
それから、全体的にスケジュールが前倒しになっているので、予定より早く集合してほしいとスタッフ。予定より早く進行するのって珍しいな。
ロビーは参加者がちらほら。私が参加したアマチュア部門の前は、大学生部門と一般部門の審査なので、ホールからはバラードやら幻想曲の華麗なる演奏が聴こえてくる。コンクールの演奏前に音大生の演奏を聴くのは、正直、精神衛生上よくない。聴けば聴くほど、コンプレックスに心が侵食されるのだ。
とはいえ、外はすっかり夜で寒空だし、隣のメインホールのロビーでしばらく時間をつぶした。
指定された時間になったのでロビーに戻ると、すぐにホールの袖に通された。私は、アマチュアA部門の二番手。一番手の女性がステージに立つと、すぐに出番が来る。ちょっと心の準備ができていないかも。
コンクールのスタッフが、私の後に演奏する女性と冗談を交えて親しげに話をしている。どうやら知人同士のようだ。しかし、ホールの袖で、スタッフがぺちゃくちゃと参加者に話しかけるのはいかがなものか。正直、集中して出番を待っているときに、ちょっと心を乱された。数万円の参加費を支払っているのだから、配慮が欲しいものだ。
春に参加したアールンピアノコンクールの事務局スタッフの印象がすこぶるよかっただけに、この一点において参加者としては評価ダウン。
すぐに出番が来て、いざステージへ。
一度、弾いたことがあるホールなので、ピアノを弾き始めるまでは緊張の度合いは低かった。ところが、いざ、弾き始めると「あれ?」何かが違う。音が硬くて伸びないような‥‥。
目の前に「YAMAHA」のロゴマークが。前回のアールンコンクールの際、ピアノがスタインウェイだったので、すっかりスタインウェイだと思い込んでいた。実は、昼間の指慣らしも一週間前のスタジオ練習も、わざわざスタインウェイの部屋を借りて、“浅いタッチ”シフトを敷いていたのだ。こんなことに動揺するなんて恥ずかしいが、緊張の中、弾いていると、照明に光る金色の「YAMAHA」の文字ばかり目に入って、中間部を過ぎる頃、音を大きく外してしまった。
ノクターンも、想像していたよりも音が伸びていかない気がして、「おかしいな?」なんて思っているうちに、通常、ありえない箇所でミスをやらかしてしまった。
それでも、二曲とも何度もステージで弾いている曲なので、ミスをしても、以前に比べるとその小節の中ですばやく復帰できるようになった気がする。
とにかく、まったく満足できる演奏ではなかった。ロビーに戻るとちょっと落ち込んだ。
‥‥こりゃ、絶対にダメだな。いくら何でもキズが多すぎ。ま、評価できるとしたら、演奏が停まらなかったくらいかな。今年は、いいことなかったな。帰りは、しんどいから新幹線で帰ろう‥‥なんて、ネガティブな思いの断片が、発表までの一時間、ずっと頭の中を渦巻いた。
審査発表&表彰式は夜8時半から。小学生の審査は朝10時からなので、遠方からの小学生参加者親子は、時間をつぶすの大変だったろうな。
審査は早めに終わったが、審査発表は定刻どおり夜8時半スタート。最初に、審査委員長の講評があって、奨励賞→銅賞→銀賞→金賞の順番に発表される。正直、「奨励賞くらいは欲しいな、がんばったで賞って感じで」と思っていたのだが、奨励賞の際に自分の名前が呼ばれなかったので、「あちゃ」と思った。と、同時に、なぜだか「あ、今日、TSUTAYAにDVD返却しなきゃ!」ってことを思い出す。新幹線で早く帰らないと、レンタル期日に間に合わない!と思って、そっとホールを出ようとしたら、銅賞のところで私の名前が。
え‥‥!
「銅賞の方は、ステージにお上がりください」とのアナウンスに導かれて、ステージに向かう。いつもながら、お子ちゃまと一緒にステージに上がるこの瞬間は、とても恥ずかしい。
表彰状と記念品の入った袋をもらった。審査員の先生方に頭を下げる。時間も夜9時前になったので、表彰式は手短に終了。ロビーを出たところで、師匠に電話してお礼を述べる。「リハーサルレッスンの時間、空けておいたからね」と師匠。
ありがとうございます。
さて、ケータイの乗り換え案内で、電車の時刻表を調べると、21時16分の快速ラピットに乗ると、何とか23時には自宅に帰れそう。よし、土曜日中には、DVDをTSUTAYAに返却できる。
レンタルしたDVDは『機動戦士ガンダム SEED DESTINY』と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』。ヱヴァンゲリヲンは1.01版と1.11版が違うストーリーだと思って、2枚借りたら、実はまるまる同じストーリーで先週末ショックを受けたのだ。同じDVDで、2枚分の延滞料金を支払うのはバカバカしい。何としても返却するのだ!と決意をもって宇都宮線で家路に着いた。
23時30分、無事、TSUTAYAでDVDを返却。コンクールの予選通過とDVD返却、2つの達成感を味わいつつ、家に帰った。
さて、遅い晩御飯をと思って台所に入るとご飯がない! すでに寝ていた妻に尋ねたら、「すっかり食べて帰ると思った」と。
‥‥‥。
仕方なく、クルマに乗って国道沿いのレストランを探す。が、ファストフードも、ファミレスも、深夜0時を過ぎて店じまいしている。
目に入ったのが「すき家」だった。牛丼まつり開催中、牛丼+サラダ+味噌汁のセットが399円だって。
長い長い一日でした。