「辻井さんが遊んだミニピアノ」って物語を買う人
辻井さん遊んだミニピアノ、売れまくり 1カ月待ち(asahi.com)
米国の国際ピアノコンクールで優勝した全盲のピアニスト辻井伸行さん(20)が幼いころに親しんだおもちゃのミニピアノが、売れに売れている。辻井さんの優勝以来、製造元の河合楽器製作所(浜松市中区)には注文が殺到し、生産が追いつかないほど。我が子や孫に使わせたいと、父母や祖父母らからの問い合わせが引きも切らない。
あは。ちょっとイタいニュースだな。
毎年、赤ちゃんの命名ランキングで、「大輔」とか「佑樹」とか、その年に活躍した高校球児やスポーツ選手の名前が上位になるじゃないですか。このニュース、同種のイタさを感じる私はひねくれ者?
テレビのワイドーショーで幼少の辻井さんの映像を見て、「我が子や孫にミニピアノを」と、いきなり音楽教育に目覚める人って、きっと夏の終わりに、ガンガン冷房効いた部屋で24時間テレビに感動して、砂漠化防止の募金に出かけるんだけど、翌月にはすっかり忘れたりするんだろうな、とか思ったりします。
そうして自宅にやってきたミニピアノの100台中99台は、子供と一週間くらい楽しく遊ぶんだけど、翌月にはおもちゃ箱の中ででかいスペースを占有し、半年後はフリーマーケットに並んでいたり…ってのが現実なのでは。
ま、これも燃え上がる愛の証ですから。
ただ、モノが満ちた現代の日本社会においては、人はモノではなくストーリーを消費するものだな、と改めて思いました。“モノ”としてのミニピアノが売れているのじゃないのです。たぶん、この購入者の多くは、材質、音色等のスペックなんて確認しないですよ。「辻井さんが幼少の頃遊んだ」という“ストーリー”を購入したわけです。
もっというと、この商品ユーザーである子供も主役じゃないです。「辻井さんが幼少の頃遊んだピアノを、子供に買い与えた私」というストーリーが、商品価値の本質なのでは。
パッと見、イタいニュースでしかないのですが、大げさにいうと、急激に老化が進行する日本経済の滋養強壮を図るには、イベント性や舞台性という精力剤を投与し続けるしかないのか、と思ったりしました。お年寄りは、新しい“モノ”には飛びつかないですから。
辻井伸行さんが
幼いころに親しんだ
おもちゃのミニピアノを
緊急入荷しました!
この一台から、お子様の音楽家の
キャリアが始まります。
はっきりいって、便乗商法です。
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