アールンコンクール入賞者演奏会報告(後編)
5月4日に横浜市青葉台のフィリアホールで行われた、アールンピアノコンクール入賞者演奏会のご報告、後編です。仕事が忙しくて書くのが遅れ、10日間ほど経ってしまいました。すみませんです。※前編はこちら
14時30分からのアマチュア&高校生の部、私がトップバッター。休憩時間にイスの高さを調整しておいたので、ステージに出て演奏に集中できる。いつもはまずイスの高さがマッチするかどうか、気になるから。ステージから客席を見ると、観客は半分以下しか埋まっていない。出演者の父兄が中心なのだろう。発表会のような雰囲気だ。
コンクールと違って、結果が問われないので、落ち着いて演奏を開始できた。一曲目はノクターン第一番。あ、今までのステージで一番いいかも、スタインウェイの浅いタッチも気にならなくなった‥‥と余裕を感じたら、何でもないアルペジオの下降で軽いミスをしてしまった。せっかく出だしはいい感じだったのにとガックシ。ちょっと悲しい表情になったかな。二曲目は新エチュード第一番。ミスは2箇所。大勢に影響のないレベルだけど、悔いは残る。
演奏を終えておじぎをし、ステージを去ろうとすると、花束を持った女性が近づいてきた。仕事仲間の写真家・Tさんだ。花束なんてめったにもらったことがないので、受け取り方がわからず、思わずTさんに合掌してしまう。タイのお坊さんみたいな挨拶になってしまった。観客の皆さん、もう一度拍手してくださった。舞台袖に帰ると、次のSさんがスタンバイしている。彼女のキラキラした「喜びの島」聴きたかったけど、このタイミングでは客席には入れないな。
舞台袖を去ろうとすると、事務局美女3号がやってきて「写真撮影お願いします」と。花束を抱えて、楽屋エリアに向かう。「ホームページでの顔出しはご容赦くださいね」と再び合掌してお願いしつつ、撮影に応じる。撮影の後、ここぞとばかりに事務局美女3号と談笑する。
美女3号「とってもよかったですよ」
うさぎ「いえいえ、72点くらいですかね。まだまだです」
美女3号「第10回の予選はこの後にありますが、どうですか?」
うさぎ「今年一年修行をして出直してきます」
なんて話。
もっとお話したかったのだが、本番演奏中なので5分ほどで切り上げて、客席に向かった。
E級(高校生)は、一位から五位までの5人が演奏。みんな若さあふれるフレッシュな演奏だ。次のような曲目だった。
ショパン/スケルツォ 第2番
ショパン/スケルツォ 第4番
ドビュッシー/「奇人ラヴィーヌ将軍」「花火」
スクリャービン/ソナタ第2番「幻想ソナタ」
ショパン/バラード 第4番
5人の中では、四位のIさんが演奏したショパンの「スケルツォ 第4番」が印象的だった。のびやかで、さわやか。それでいて時折キュートな表情。青文字系ティーンズ誌(=女性誌『sweet』『spring』)ならぬ“青文字系ショパン”って感じかな。
一位のEさんの「バラード 第4番」はとにかく安定していた。素晴らしい演奏だった。確かに一位だけのことはある。ただバラード第4番って、私は破滅的な優雅さというか、堕ちる美しさのようなものを感じるのです。「恋はするものでなく、恋は堕ちるもの」なんて、江国香織か誰かが言ってたっけ。バラード第4番は、恋をした女のコではなく、恋に堕ちた女性のものってイメージが。ま、破滅と堕落は、ティーンズに求めることはできません。
入賞者演奏のラストは、F級(大学生以上)一位のTさん演奏のスクリャービン「幻想曲」。低音がズドンとホールに響き、これまでの誰の演奏とも違った立体感を感じた。さすが! 私のようなアマチュアとプロを目指せる人の違いって、ホールで演奏した際の音の立体感だと思う。アマチュアが弾くと、どんなに強く弾いても、何ていうのか音が左右に平坦にしか響かないのだけど、プロを目指せる人の音って、左右だけでなく上下に高さがある感じ。Tさんの演奏、音による彫刻を見るようだった。
休憩時間になって、客席にいた写真家・Tさんにご挨拶。Tさんのほか、会社の同僚・Kさんが彼氏と二人で来てくれた。廊下に出てKさんにTさんを紹介。必然的に名刺交換。ここに仕事モードを持ち込みたくなかったんだけど、ま、仕方ない‥‥。
その後、三人の審査員の演奏があった。
佐藤勝重先生(桐朋学園大学、昭和音楽大学講師)
ショパン ノクターン 遺作、スケルツォ第2番 Op.31
中井恒仁先生(桐朋学園大学・大学院講師)
ベートーヴェン ソナタ第14番 OP.27-2 「月光」 全楽章
村上弦一郎先生(桐朋学園大学教授)
スカルラッティ ソナタL.23、L.366
この三人のピアニストの演奏が入場料1000円って、超お得だと思う。
審査委員長・村上先生の演奏が圧倒的だった。ここまで約30人が演奏をしたけど、次元がまったく違っていた。ここまでの演奏って、ステージ前方のピアノから音が聴こえてきた(当たり前だけど)。村上先生の音は、キラキラ光る折り紙で作った紙吹雪をホールの中にパッと舞わせたみたい。音が降ってくるのだ。ジャズピアニストのようなパフォーマンスもびっくりしたが、音の違いに客席にいた出演者はみんな、唖然とした表情をしていた。衝撃ですわ‥‥。
17時から表彰式。出演者以外の聴衆みんなの投票で選ぶベスト演奏の発表があり、F級(大学生以上)一位のTさんが受賞。ま、誰も異論なしの受賞でしょう。その後、出演者へのお楽しみプレゼント抽選会(笑)と、ステージで審査員との写真撮影タイムなんてのがあり、アットホームな雰囲気で17時30分にすべてのプログラムが終了した。
せっかく写真家・Tさんが来てくれたので、私も審査員の先生ほか、事務局美女1号・2号ともついに記念写真撮影に成功。事務局美女との記念撮影は全国大会時の課題。これで思い残すことはない‥‥(笑)。
その後、会場を出て、写真家・Tさんと近くのイタリアンレストランで食事。タキシードと楽譜が入った吉田カバンのPCバッグのほか、花束と記念品の荷物を抱えて自宅に着いたのが深夜0時前。一日がかりの演奏会だったな。
今回は、一学期の終業式。いろんな課題が見えたので、コンクールは来年春まで自粛。当面、実力向上に励みたいと思います。
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