昭和が香るシネマ・川越スカラ座で映画『ひまわり』を鑑賞
映画『ひまわり』が1970年に公開されてから50周年。最新の技術で画質をよくしたHDレストア版が映画館で上映中ということを知り、昨日、見に行きました。
ヘンリー・マンシーニの有名なテーマ曲を、ぜひ劇場で聴いてみたかったのです。
『ひまわり』は首都圏の20館以上のスクリーンで上映されています。せっかくの機会なので、大手シネコンではなく、1970年公開当時の面影が残る「川越スカラ座」に出かけました。
イタリア映画をスカラ座で見るって、心躍るじゃありませんか!
川越スカラ座は、1905年(明治38年)に寄席「一力亭」として開業。太平洋戦争直前の1940年(昭和15年)に松竹の封切映画館「川越松竹館」となり、1963年(昭和38年)に現在の館名に改称しました。
2007年、一時的に閉館しましたが、昭和の映画館の面影を今なお残す貴重な建物です。
小江戸・川越は古い建物が残るだけでなく、住む人々が意識的にレトロな町並み演出に取り組んでいるようです。電信柱に立てかけられた映画館の木製看板も、よい雰囲気を醸し出しています。
前置きが長くなりました。映画『ひまわり』の感想です。
初めてこの映画を見たのは20年くらい前だったでしょうか。ビデオで見ました。「不朽の名作」「恋愛映画の金字塔」という言葉に恥じない素晴らしい映画でした。下はあらすじ。
第二次世界大戦下、陽気なアントニオ(マストロヤンニ)と結婚したナポリ女のジョバンナ(ローレン)は、夫を戦争に行かせないために狂言芝居までするが、アントニオは地獄のソ連戦線に送られてしまう。
終戦後も戻らない夫を探すために、ジョバンナはソ連に向かい夫の足跡を追う。しかし、広大なひまわり畑の果てに待っていたのは、美しいロシア娘と結婚し、子供に恵まれた幸せなアントニオの姿だった…。
映画『ひまわり』公式サイトより
まず、主演のソフィア・ローレンですね。大女優です。映画の中で何をやっても絵になる。
イヤリングをさりげなくつける姿、ベッドに奔放に寝転ぶ姿、汚い駅のトイレでキスしても絵になるのですよ。
白髪まじりにやつれた顔立ちもまた美しかった。
それから、この映画は公開当時、とりわけ日本人に人気だったとのこと。理由がよくわかりました。
きっと主人公が「敗戦国の庶民」ゆえ、グッと心に迫ったのでは。1970年当時の観客な、第二次世界大戦を実際に経験した人たちがまだまだいたはず。舞台であるロシアとイタリアを、中国東北地方(満州)やシベリアと祖国・日本に重ね合わせたに違いありません。
「戦争が引き裂いた恋愛」という同じテーマの映画では『シェルブールの雨傘』がありますが、日本人がはるかに『ひまわり』に思い入れを持ちそうなのは、敗戦国の庶民を描いた作品であることが大きい気がしました。
そして、ヘンリー・マンシーニの音楽! オペラはオペラハウスで、映画音楽は映画館で聴くのが一番です。
映画館を出た後、終日けだるい余韻にひたった1日でした。