音大・美大の高い授業料を、親自身が納得して払える思考法(その2)
自らを省みるに、息子が美術大学を目指すきかっけは、私自身の趣味と願望(あるいはエゴ)の影響が多分にある気がします。
認めるのはちょっと嫌だけど、やはり願望(あるいはエゴ)がある。
……音大・美大を目指す子どもを持つ親御さんは、同じ想いを持っている人が多いのでは?
私の場合は20代の仕事をめぐる環境の影響が大きそう。
私は新卒で出版社に就職。月刊雑誌の編集部に配属になり、学生時代までの人生で接触することがなかったプロのグラフィックデザイナーやイラストレーター、写真家と日々仕事をすることになりました。
20代前半でアートディレクターを務めるようなアメリカ帰りの同世代のデザイナーもいて、新米で編集部の単なるパシリでしかなかった私は、激しいコンプレックスにさいなまれたものです。
そんなクリエイターの多くは自立したフリーランスです。小さいながらも自分の「城」を持ち、仕事をしていました。
写真家のスタジオのデスクにはカッコいい写真集があり、デザイナーのオフィスの本棚にはセンスのいい洋書の雑誌があり、イラストレーターのアトリエの壁にはお気に入りのアーティストの版画が、何気なく飾られていたものです。「城」そのものが表現でした。
彼らの自立したワークスタイルにずっと憧れを持ちつつ、私は結局、サラリーマンとして会社に所属し、今に至っています。
自分の胸に手を当てて告白すると、「一人でも生きていける、自立したクリエイターになってほしい」という願望を、子どもの将来に投影していたところがなきにしもあらず。
ですので、美術大学への進学にかかる高い授業料は「自業自得」「身から出たサビ」ではあります。
しかし、それにしても4年間で650万円程度の授業料はやはり高い! これ、自分自身、どのように納得すべきなのでしょう。