クラシック音楽演奏会の市場規模、他業界と比較すると?
クラシックの演奏会の市場規模って、どのくらいなのでしょう? こういうデータをあまり見かけたことがないので、調べてみました。
出典は、ライブ・エンタテインメント調査委員会編『2017ライブ・エンタテインメント白書』。調査委員会には、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟等、音楽・演劇等の6団体。広告会社の電通、博報堂。ぴあ、ローソン、イープラスのチケットエージェンシー3社が参加しています。
ですので、ホールやプレイガイド、コンビニエンスストアでチケットが発売された演奏会が中心。主催者が友人、知人にチケットを手売りしている演奏会の数字は入っていません。ここは、ビジネス向けデータなので仕方がないです。
まず、2016年日本で行われたクラシックコンサートのマクロの数字から。
演奏会の市場規模は325億円
公演総数 13,752公演(国内演奏家12,304公演、海外演奏家1,448公演)
2015年度は12,410公演。前年比 10.8%増加。
動員数 637万人(国内演奏家535万人、海外演奏家102万人)
2015年度は688万人。前年比 7.4%減少
市場規模 325億円(国内演奏家233億円、海外演奏家92億円)
2015年度は320億円。前年比 1.6%増加
数字から見えること。
- 開催されたコンサートの総数は増えているのに、動員数は減っている。
- 動員数は減っているのに、市場規模は微増(チケット単価が上昇)。
国内演奏家の1公演あたりの規模感。
- 1公演あたりの動員数(国内演奏家)=動員数÷公演総数=435人
- 1公演あたりの客単価(国内演奏家)=市場規模÷動員数=4,355円
- 1公演あたりの売上規模(国内演奏家)=市場規模÷公演総数=189.4万円
以上の数字は、オペラ、オーケストラからソロリサイタルまですべて含んでいるので、ピアノ単体だと数字が変わります。ただ、出かける観客の立場に立つと、オケであれソロピアノであれ、同じスタンスですので、ある程度の参考になると思います。
なお、もう少し深掘りしていくと、私たちピアノ好きには見えない風景が広がります。
何が市場規模を押し上げたかを見ると、2つ要因があるらしい。
一つはオーケストラ公演の多様化。「艦隊これくしょん」「グランブルーファンタジー」等のゲーム音楽。「ハリー・ポッター」「タイタニック」映画の本編を観ながらオーケストラの生演奏を聴くシネマオーケストラコンサート。ここが人気の演奏会のスタイルです(クラシックかというと微妙ですが)。プロオーケストラはここで稼いでいそう。
もう一つ、大幅に動員数が増えたのが吹奏楽。警察庁・消防庁・自衛隊の吹奏楽団の公演のほか、全日本吹奏楽コンクールのチケットは入手困難な状態とのこと。アニメ「響け!ユーフォニアム」の影響も大きそう。
以上を見ると、直球ど真ん中のクラシックは規模が小さくなっているのかも。
カプセル玩具、フィギュア市場と同じサイズ
ついでに、じゃあ、325億円の市場規模ってどのくらいなのか? ちょこっと調べてみるとこんな感じです(バレンタインチョコって、数週間でこんなにデカイのか!)
いずれも国内。
- バレンタインチョコレート(総務省家計調査より推定・2016年) 367億円
- 電子雑誌(インプレス総研・2016年) 340億円
- 補聴器(日本補聴器工業会・2015年) 332億円
- 室内向け芳香・消臭剤(富士総研・2012年) 329億円
- カプセル玩具(日本玩具協会・2015年) 316億円
- フィギュア(矢野経済研究所・2015年 310億円
ちなみに楽器は少し前ですが、こんな感じ。
- 楽器(全国楽器製造協会・2010年)496億円
- ピアノ(全国楽器製造協会・2010年)104億円
なお、産業全体で比較すると。
- 自動車関連(財務省・2014年) 62.5兆円
- 建設(国土交通省・2016年) 51.8兆円
- 医療(厚生労働省・2014年) 40.8兆円
- 医療(厚生労働省・2014年) 40.8兆円
こういう風に数字をつまびらかにすると、「演奏家」という職業を成立するための市場規模は小さいことがわかります。