ラフマニノフのピアノ協奏曲に「第5番」があったとは!
ピアノ好きにとって、ラフマニノフの華麗なるピアノ曲の数々は憧れですね。でも、ピアノのない彼の楽曲って積極的に聴いたりしますか? 私は、ベートーヴェンやシューマン、ブラームスは、ピアノ曲と同じくらいに交響曲もよく聞きます。が、ラフマニノフの交響曲って、これまであまり積極的に聴いていませんでした。
彼の交響曲って、メロディーやハーモニーは美しいのだけど、なんせピアノ協奏曲の印象が強すぎるので、何やらいつまで経ってもピアノが現れない協奏曲のように感じてしまうのです。あぁ、ここでピアノが入ってくるとカッコいいんだが、と思う瞬間がしばしばあります。弦楽器や管楽器をやっている人は、そんなことを思わないのでしょうけど。
「海老天のない天丼」といいますか、「うなぎのないうな重」といいますか。
ピアノを基準に交響曲を聴いてはだめだ!と考え、改めて聴いてはみたものの、やはり、何かが物足りない。
ところが、私と同じことを考えてた人っているんですね。交響曲第2番を「ピアノ協奏曲 第5番」としてアレンジして世に出した人が。
音楽プロデューサーのピーター・ファン・ヴィンケル氏。
私は以前から、ラフマニノフの音楽を聴くと、オーケストラの音よりもピアノの音を連想していました。ラフマニノフの音楽的な個性は器楽に向いていると考えます。交響曲第2番を聴くとピアノを連想し続けてしまうのです。こんな素晴らしい曲がピアノ曲として存在しないことは残念でなりませんでした。ラフマニノフが残したスコアを見て考えていくうちに、作品に対して異論を唱えている訳ではありませんが、何かが足りないのでは…と考えるようになってしまったのです。…ピアノを入れてみるのはどうだろうか…?
その気持ち、分かる、分かる。
交響曲を協奏曲に編曲をしたのは、作曲家のアレクサンダー・ヴァレンベルグ氏。キワモノじゃないかと思って、恐る恐る聴いてみたら、これがよい! ラフマニノフ自身も納得するんじゃないかと思えるほど。違和感がありません。2番、3番と比較しても遜色なく、「5番」にふさわしい出来栄え。
この編曲版、ラフマニノフの権利財団と孫のアレクサンダー・ラフマニノフの許諾も得ているそうです。
いやー、「あったらな」と思いつきなら誰にでもできる。そこから、作曲家に編曲を依頼して、指揮者とソリストとオーケストラに演奏してもらって、「公式」のお墨付きをもらい、CD販売にまで持っていくヴィンケル氏のパワーと執念、脱帽です。