「社会人のためのショパンエチュード公開レッスン」に参加
12月23日(祝)、「社会人アマチュアのためのショパンエチュード公開レッスン」というレクチャーイベントに参加した。講師・指導者は、早稲田中・高校理事でピアニストの金子一朗さん。1月15日に行われる「社会人アマチュアのためのショパンエチュード大演奏会」のセットイベントだ。
朝10時45分から夜19時までぶっ通しで行われた。ショパンエチュードの総論・各論レクチャーと共に、6人の社会人アマチュアが45分のレッスンを受け、20数人が聴講するスタイル。
今回は第2回目。第1回の評判がとてもよく、次回行われる時は必ず参加しようと思っていた。期待どおりの濃密な内容だった。
金子さんのレクチャーは非常に理論的かつ実際的。普段、何となく感じていたことを言語化し、箇条書きでポイントを説明いただいたので、とにかくわかりやすかった。さすがは本業が高校の数学の先生だと感心した。
メモしたことをいくつか箇条書きに。
- 弾けない理由を知らず、練習回数のみ増やすことは意味がないこと
- 楽譜を正しく読むこと。特に一曲の中の前後、流れの関係性
- 速度を求めると速く弾けるようにはならない
- 和声分析の重要性
- 弾けないところ、弾きにくいところはフレーズを分解してグループ化してみる
- 跳躍は真横だけでなく、X軸Y軸Z軸と立体的に考える
中でも一つ印象に残ったのは、跳躍の失敗(音を外すこと)について。
金子さんいわく、音を外す箇所について自身で数えたことがあるらしい。すると、オクターブや5度といった跳躍はほぼ外すことがなかった、と。一方、7度や9度、増5度、減5度といった、オクターブや5度の周辺に跳ぶ際にミスタッチが多いことがわかった、と。面白いことに声楽家も、7度や9度、増5度や減5度を歌うのは難しい、とのこと。
そう考えると、「ここはオクターブ、5度周辺への跳躍」と、あらかじめマークしておけば意識できそうだ。
このように、弾けない、弾きにくい理由を科学していく姿勢が何よりも重要だと思った。
実際、レクチャーでは、金子さんが「僕は、音を外す箇所について実際に数えてみたんですよ」という箇所で、ちょっとした笑い声が起きた。聴講生全員「そこまでやるんだ」という感想だったと思う(私もそうだった)。
しかし、仕事に置き直すと、製造部門の品質管理においてこの手の調査は必ず行っている。ヒストグラムを用いて、バラツキのあるデータの集合の中にある平均値、分散を把握する。その結果に基づき、次の行動に移す。それを演奏に置き直して行っているようなものだ。
今さらながら、演奏を「品質管理」の視点で考え直すと、どこで、何が起きて、どこが問題なのかを正確に把握できるようになるのでは?と思った。
金子さんの著書『挑戦するピアニスト 独学の流儀』をもう一度、読み返さなきゃ。