芥川龍之介の超短編小説『ピアノ』が美しすぎる
昨夜、「なんかピアノ関係の面白い本がないかな?」とKobo store(電子書籍ストア)の検索窓に「ピアノ」という文字を入れて検索をしたら、芥川龍之介の『ピアノ』という小説を見つけました。芥川にこんなタイトルの小説があったとは!
著作権保護の期間は終わっており、青空文庫で無料で読むことができます。さっそくダウンロードして、今日のランチタイムに電子書籍リーダーで読みました。1400文字程度の超短編小説、あっという間に読んでしまった。
さすが、芥川龍之介! こうくるか!という読後感。
関東大震災後の横浜の山手、主人公は、ある崩れた家の跡にピアノを発見します。
すると突然聞えたのは誰かのピアノを打つた音だつた。いや、「打つた」と言ふよりも寧ろ触つた音だつた。わたしは思はず足をゆるめ、荒涼としたあたりを眺めまはした。ピアノは丁度月の光に細長い鍵盤を仄めかせてゐた、あの藜の中にあるピアノは。――しかし人かげはどこにもなかつた。
主人公は、超自然現象を信じないリアリスト。では、なぜ、ピアノが鳴ったんでしょう?
五日ばかりたつた後、わたしは同じ用件の為に同じ山手を通りかゝつた。ピアノは不相変ひつそりと藜の中に蹲つてゐた。桃色、水色、薄黄色などの譜本の散乱してゐることもやはりこの前に変らなかつた。只けふはそれ等は勿論、崩れ落ちた煉瓦やスレヱトも秋晴れの日の光にかがやいてゐた。
この小説が発表された大正時代は、楽譜を「譜本」と表現していたのか。それにしても、あたかも雑草に埋もれたピアノの光景が、目の前に浮かぶ立つような美しさ。
ラヴェルの『夜のガスパール』のような、幻想的かつ美しい短編小説でした。
この小説は青空文庫で無料で読めますが、Webブラウザだと横書きで表示されてしまいます。
ぜひ、スマートフォンの電子書籍アプリ、またはKindleやKobo等の電子書籍リーダーで、縦書きで読んで欲しいです。でないと、日本語の美しさが半減してしまいます。
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