ピアニスト・有島京さんのインタビューに注目
現在開催中のショパン国際ピアノコンクール2015については、終わってから何か書こうと思っていました。
しかし、書かざるをえない、いや「突っ込まざるをえない」コンテスタントが目の前に現れました。その名は有島京(みやこ)さん。
まずはこちらのインタビュー動画を。ご覧下さい。
なぜ、ショパンコンクールに参加したのですか?
正直なところ、あまり、これだからショパンコンクールに参加しましたという、はっきりした理由ってのは自分の中で答えを出せない。けど、五年前に一度、予備選まで参加して、それからポーランドで留学を始めて、それでちょうど5年生になったところで、もう一度、ショパンコンクールがあって、ただ自然に参加したという感じで。それ以外に何か特別に考えて参加したというわけではないです。
ただ、もちろん私にとっても4年半すごしたポーランドだし、ワルシャワのフィルハーモニーにも何回もコンサートで通ったりして、だいぶいろんなこともわかっていて、自分が近く感じるコンクールだから、参加して幸せだとは思っています。
一次予選が始まる前に、ざーっと参加者のインタビュー動画を見たんですが、私、彼女のインタビューが一番鮮烈に印象に残りました。
だって、「ショパンコンクールに参加したはっきりとした理由はない」「ポーランドに留学をしていて、(たまたま)ショパンコンクールが開催されるので、自然に参加した」ですぞ。
一般的な日本人が期待する予定調和を崩す受け答えに、大いにそそられました。
この際だから、はっきり言いましょう。私、こういうこと言うオトコは大嫌い。
「何か持っていると言われつづけてきました。今日、何を持っているか確信しました。それは仲間です」
こういう発言って、絶対にメディアを通じて、日本人一般大衆がどう受け止めるかを計算しているに違いない。
メダルを獲得したオリンピック選手のインタビューであれ、コンクールのインタビューであれ、マスメディアを通じた日本人のコミュニケーションには、冒頭に「子供の頃からの夢の実現」やら「両親と仲間への感謝」やら「自分一人では成し遂げられなかった」やら、必ず特有のフレーズが求められます(彼女も最後にポツポツと口にしてますが)。
ある種、そういう予定調和的なフレーズが、日本人のコミュニケーションのプロコトル(「空気」とも言います)になっていて、息苦しさやバカバカしさを感じることが時々あります。私が偏屈なのか、へそ曲がりなのかわかりませんが。
私、有島京さんのインタビュー動画を最後まで見て、これぞ“真心”を感じましたよ。彼女は心のまま正直に何かを伝えようとしている。でも、うまく言葉にできない。舌足らずになってしまう。
きっと、彼女にとって、大人の日本人社会は生きづらいんじゃないかな。絶対「空気を読めない奴」などとレッテルを貼られそうだもの。
私、彼女が奏でる音楽については何も述べません。だって、ナマの演奏を聴いていないからわからない。
でも、ショパンコンクールの結果はどうであれ、ピアニストとして今後の活動に期待しています。インタビューの彼女を見るかぎり、大衆の期待(=業界の期待)に迎合したような演奏はしない気がするし、たとえコンクールで入賞したとしても、そういう期待に応えないでほしい。
そしてマイペースに、でも真摯に音楽に向き合ってほしい。一次予選のバルカローレのイントロを聴いて、そう思った。
一次予選を通過。日本人5人の通過者のなかでも、有島京さん、今ひとつ目立たない存在だけど、鍵盤うさぎはずっと注目しております。
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コメント一覧
私は今回のショパンコンクールで初めて有島さんを知りました。彼女の打算のない真摯な演奏、ポーランドの空気を感じられる演奏が好きです。
日本人っぽくない演奏です。
彼女のプロフィールを拝見して、桐朋時代に竹内啓子先生に支持されていたことを知り、有島さんの音の美しさや自然体での演奏に納得してしまいました。ピアノの道を進んでいくことを決めた娘が共々注目している方です。