感想/デジュー・ラーンキ演奏会@白寿ホール
デジュー・ラーンキが来日。各地でリサイタルを開きました。感想を読むと、みんな一様に「懐かしい」という声が。かく言う私も、その名を知った際、「わぁ、懐かしい!」というのが第一声でした。
1975年に初来日。当時は、アンドレーシュ・シフ、ゾルターン・コチシュとセットで「ハンガリーの若手三羽烏」なんて称されていました。私がショパンの大曲を知るきっかけになったのは、1980年、中学二年生のとき、NHK FMで聴いた彼のバラードやスケルツォでした。それまでは、名曲アルバムで聴く「別れの歌」や「雨だれの前奏曲」しか知らなかった。
還暦すぎてもイケメンはイケメンだった
とにかく、若くてイキのいいハンガリーのイケメンピアニストというのが当時の印象。実際、『音楽の友』誌で見た彼の姿は本当にカッコよかった。花束を抱えた若い女性ファンがこぞってリサイタルに出かけたらしい。下は当時のCDジャケットのラーンキ青年。
当時、シフ、コチシュ、ラーンキの中で、日本での人気はラーンキが突出していたいのですよ。それが、1990年代あたりからシフの評価がどんどんと高まり、女性ファンが追いかける対象はブーニン、キーシンへの移って、いつの間にやら私の中で「あの人は今」状態になってしまった気がします。
実際には、2010年、2012年にも来日しており、私の情報収集不足ではあるのですが、あまり話題になっていなかったことは否めません。単に招聘事務所のプロモーション不足なのかもしれませんが。
とにかく、私にとってはショパンへの扉を開いたピアニストです。一度はライブを聴いてみたい!というわけで、7月8日(水)、白寿ホールのリサイタルへ行ってきました。
あのイメメン(昔は「ハンサム」といった)ピアニストも、今では64歳。どんな風貌なんだろう?とドキドキしながら登場を待ちました。
おお!
やはりイケメンは還暦すぎてもカッコよかった。
24の前奏曲、青年のようなひらめきと情熱
さて、今回は19時30分開始、休憩なし1時間ちょっとのミニリサイタル。昼・夜2回公演、ダブルヘッダーという珍しいスタイルでした。会場は、300席という比較的小さなホール。ピアニストのキータッチや息遣いが伝わってくるので、室内楽的な魅力を味わえました。
プログラムは、ベートーヴェンのピアノソナタ 第16番 ト長調 作品31-1と、ショパンの24の前奏曲 作品28の2本立て。
ベートーヴェンは硬派で手堅い印象でしたが、ショパンの24の前奏曲が圧巻でした。
一曲一曲に明確な個性とテーマが与えられて、一曲一曲がホールの空間に翼を持って飛び立つような、そんな演奏でした。
しっかりと構成を練りこんだ上で、いったんその構成をすべて御破算にし、即興的に弾いたって感じでしょうか。還暦すぎてるけど、青年のようなひらめきと情熱が伝わりました。24曲、45分ほどの演奏があっという間に終わってしまった。
なんだか私、サミエル・ウルマンの「青年の詩」を思い出しましたよ。
青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心,こう言う様相を青春と言うのだ。年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ。
いやー、還暦を過ぎて、こういう男性になりたいものだと思った。
今年聴いたピアニストのリサイタルの中でベストパフォーマンス!
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