金子勝子門下生50周年記念演奏会の報告(後編)

2015年7月23日


後編を書くのが遅くなりました。5月2日(土)に紀尾井ホールで行われた「金子勝子門下生による50周年記念コンサート“音の調べ”」のご報告の続きです。前編はこちら

当日のプログラムは、

キッズピアニストの部 3人
未来のピアニストの部 4人
(休憩)
アマチュアピアニストの部 3人
(休憩)
新進ピアニストの部 6人

という流れ。私はアマチュアピアニストの部の先頭バッターで13時57分から演奏でした。

演奏はともかく、選曲は素晴らしい!

13時30分には舞台袖に移動して、テーブルに座って楽譜を見ながら体の中に音楽を鳴らせていました。しかし、かれこれ一年くらい弾いている曲なのに暗譜落ちの恐怖はなくならないものですね。

これまでの経験で、ステージに出て最初に16小節までがヤバイのです。異常な精神状態で、何だか分からないうちにすっ転んでしまうことが時々ありました。

なので、コンクールのときも、「最初の16小節は舞台袖で体の中に響きを完成させてから、熱々のうちにステージに持っていく」というのをここ数年実践しています。この方法がよいのか悪いのか、分からないです。

私の演奏の前は15分間の休憩があるのですが、あっという間に休憩時間が終了、出番がやってきました。


演奏はともかく胸を張ってステージへ。この紀尾井ホールのステージに立つのは3度目。さすがに1度目、2度目よりは緊張の度合いがマシになった気がします。2005年の初回は、何が何だか分からなかった。

紀尾井ホールデビュー報告(2005/5/2)

後で、門下のお母さん方から「笑顔は牛田くんと双璧でしたよ」と褒めていただきました。写真を見返すと何だか余裕の笑顔。なぜだ!

演奏したのは下の2曲。

ラモー/クラヴサン曲集より「ため息」使用楽譜
モーツァルト/アダージョ ロ短調 K.540使用楽譜

以下、一週間ほど経って、演奏の録音を聴いての感想です。

  • 最後まで音楽の流れを止めなかった(目標、低すぎ)。
  • ラモーの「ため息」、やっぱり最初の16小節が緊張で安定しなかった。装飾音も今ひとつ決まらなかったし、左手のラインを数か所、音を外している。
  • あれほどゆっくりと響きを聴きながら演奏しようと思っていたのに、普段よりテンポが早くなっていた。これも緊張からだろう。
  • 単音だけどピアノの音はきれいに通っていた。「ホールでピアノを鳴らす」ことについては自信を深めた。
  • モーツァルトのアダージョはラモーよりもはるかによかった。二曲目は一曲目よりも落ち着いて演奏できるものだ。
  • アダージョに第二主題、ほんの少しテンポが走ってしまったのは残念。
  • アダージョ、全般的に主張したいことは表現できていたと思う。
  • 演奏はともかく、選曲は素晴らしい(笑)!

    帰宅後、来場いただいたクラシック音楽好きの友人に率直な感想を尋ねてみました。「みんな、アマチュアの人たちにプロのような演奏を期待しているわけではない」「アマチュアなりに伝わるものはあったのでは」と。確かに、私が聴く側になっても、アマチュアにプロのピアニストの音楽は求めないですね。

    ただ、「演奏終了後、おじぎをして、すぐに舞台袖に去るのではなく、一回、客席をまっすぐに見てから去った方がいい」と。おお、ステージマナーについては、まったく気がついていなかった。「終わった、終わった。早く立ち去ろう」という思いが無意識に行動に表れたのかも。

    キャラが立っている新進ピアニストたち

    自分の演奏を終えて、次の次、角野隼斗くんから客席で演奏を聴きました。金子勝子ピアノ教室の数少ない大人の生徒、アマチュア仲間の戸谷さんの演奏は、いつも順番が前後なので客席で聴くことはできず、残念だった。

    新進ピアニストの演奏は、当然だけれど、小・中学生、アマチュアにない安定感で、じっくりと楽しませてもらいました。

    牛田智大くんは、シューマン=リスト「献呈」、プーランク「エディット・ピアフを讃えて」、ショパン「英雄ポロネーズ」と、彼の定番3曲。実は5年前から何度もリハーサル、発表会、演奏会で聴いているので、昔のことを思い出して懐かしかった。ステージに出てくると、キラキラしたオーラに包まれておりました。

    中谷彩花さんはスカルラッティがよかったなぁ。この日、バロックを弾いたのは私と彼女だけだった。実は紀尾井ホールってモダンピアノで弾くクラヴサン曲が本当に美しく響くのですよ。これは彼女と共通意見で、冒頭の数音を弾いただけで、演奏者の体が温かくなるような気持ちよさなのです。

    中澤真麻さんは、ドビュッシーの「映像」と薄いブルーのドレスがとてもマッチしていた。あえて言います。ダントツ可愛かった。鍵盤うさぎ独断と偏見の「今日のドレス大賞」を差し上げます。

    段あいかさん。当日朝、アメリカから到着したばかり。何だかアメリカナイズされた開放的な女子になって、ちょっとびっくりした。ショパンの「ノクターン第13番 ハ短調」はおハコ。6年ほど前に一度、この曲、発表会で聴いたことがあるけど、想い、情念が年齢と共に深くなって(いってもまだ19歳!)、ぐっとくる演奏だった。

    今西泰彦さんのラフマニノフ「ピアノソナタ第2番」。彼はライブパフォーマンスが本領。熱情ソナタ、幻想ポロネーズ、この曲と、聴衆をぐーっと惹きつけていく(というより「引っ張っていく」が正しいかな)技量は、さすがでした。ラスト、鳥肌が立ちました。

    トリは大崎結真さん、ディティユーの「ピアノソナタ」。彼女は門下出身という枠から外しても、個人的に追いかけているピアニストです。圧倒的でした。ホールという空間に、あたかも“音楽のデーモン”を召喚するような魔術を感じる演奏。圧倒的だった。

    カーテンコールの後、舞台袖で先生を交えて出演者が集合。私、陰が薄いな……。

    「中年の希望ですから」とおだてられて

    会場に来ていただいた会社の同僚、友人で、クラシック音楽に普段親しみがない人からも、「すごく盛りだくさんで面白いコンサートでしたよ」と言っていただき、本当によかった。確かに、演奏者一人ひとりキャラクターが立っていて、個性がにじみ出る演奏だったような気がします。まぁ、これは師匠・金子勝子先生の力であります。

    金子先生の生徒になって7年が経過したわけですが、7年前に中学生だった生徒は大学生に、中学生だった生徒は海外留学へ、みんな大きく成長しました。

    下は、7年前中学生だった中谷彩花さん。現在はモスクワのグネーシン音楽院に留学。今年のシャネルのピグマリオンに選ばれるなど、着実に大きな花を咲かせつつあります。並ぶと、なんだか披露宴に来た遠い親戚のおじさんのようですね。


    ところで、どうでもいい話としては、今回の演奏会、ネクタイにまったくツキがなかった。

    演奏会前夜、スーツとセットで買ったTOMORROWLANDのお気に入りネクタイが、深夜3時まで捜索しても見つからなかったし、仕方なく取り出したラルフローレンの黄色のネクタイは、お弁当のトンカツソースをぶちっとかけてシミをつけてしまいました。このネクタイ、高価だったのに(涙)。

    紀尾井ホールでの演奏会終了後、霞が関の某レストランに移動。先生の50周年記念パーティーが開かれました。

    PTNA(全日本ピアノ指導者協会)の大御所指導者たち、ピアノメーカーの幹部の方々が一堂に会し、華やかなセレモニーの場に。ご招待客は師匠の知人、友人なのでどうしても年配の方が中心。お子様はお母さんと一緒。で、私はというと、出演者のお父さんと意気投合しました。

    「いやー、うさぎさんは中年の希望ですから」と、大いに励ましていただきました。「だって、プロのピアニストだけだと“弾く側と聴く側”だけど、うさぎさんがステージに出ることで、自分もやれるかな!と思うじゃないですか」と。

    おお、ここに私の存在意義があったのか。確かに! 何十年もピアノから離れていた中年サラリーマンの私でさえ、大御所のピアノ指導者が客席で聴く中、ステージで演奏できるんだから、みんなできますって。
    ……なんて言いながら、冷静に考えると恐ろしいことです。

    同世代の中年男性だけに、その後、かつて聴いていた中森明菜、中島みゆき、甲斐バンド等の話題になり、ハレのパーティーの中で我々だけ居酒屋状態になってしまいました。

    このメンバー楽しすぎた。今度、生徒のお父さんだけ集まって飲みに行きたい。

    というわけで、気がつけばあっという間の1日でありました。

    師匠はますますお元気で、次の55周年演奏会も確実に開催されると思います。そうですね、次回は客席でゆったりと楽しみたいデス。


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