ラモーの「一つ目巨人」は怪獣・ジャミラかな
フレンチバロックの大作曲家、ジャン・フィリップ・ラモーに「一つ目巨人」という名曲があります。高校生の頃、音楽事典で初めてこの「一つ目巨人」という曲名を目にしたとき、レイ・ブラッドベリのSF小説(『火星年代記』『華氏451度』とかね)っぽく、ちょっと気になる存在でした。
その名にふさわしく、ダイナミックな演奏効果があるクラヴサン曲。聴き応えも弾き応えもある名曲です。下は曽根麻矢子さんの演奏。
この「一つ目巨人」とは、ギリシャ神話に出てくるキュクロプス(英語読で「サイクロプス」)のこと。天空神ウーラノスと大地母神ガイアの息子たちで、アルゲース、ステロペース、ブロンテースの三兄弟から成り、卓越した鍛冶技術を持つといわれています。
ガイアといえば、赤いウルトラマンと青いウルトラマンの葛藤を描き、ウルトラマンシリーズの中で異彩を放つウルトラマンガイアで、「奇獣 ガンQ」という一つ目の巨人が出現したっけ。人気の怪獣で、10年ほど前、息子にビニール人形をリクエストされた思い出があります。ガンQは、熱反応がなく生命を持たないの特徴で「不条理の塊」という怪獣でした。
しかし、ラモーの「一つ目巨人」をBGMに、ガンQの戦闘シーンを重ね合わせても、今ひとつマッチしません。どうしてかな。
調べてみると、一つ目巨人・キュクロプスの三兄弟は父親に嫌われ、兄弟族のヘカトンケイル族とともに奈落タルタロスへ落とされた、と悲しい少年時代を送ったそうな。
また、弟族のティーターン神の一人クロノスが政権を握ったあとも、久しく拘禁されたままであった、と。なかなか厳しい人生を歩んだ兄弟であったようです。
厳しくつらい人生を歩んだ巨人として思い出すのは、棲星怪獣・ジャミラでしょうか。
以下、ジャミラについてのWikipediaの解説より。
元々は、宇宙開発競争の時代に某国が打ち上げた人間衛星に乗っていた宇宙飛行士「ジャミラ」であり、正真正銘の地球人であった。事故によって水のない惑星に不時着し、救助を待つ間にその惑星の環境に適応して体が変異し、怪獣の姿になった。母国が国際批判を恐れて事実を隠蔽し、救助を出さなかったために見捨てられたことを恨み、最終的には自らの手で宇宙船を修理・改造して、復讐のために地球に帰ってきた。自由に姿を消す宇宙船を操縦し、要人を乗せた旅客機を次々と墜落させるが、科学特捜隊に宇宙船の位置を見破られて撃墜され、その姿を現す。最大の武器は、口から吐く100万度の高熱火炎。
皮膚が粘土質に変化しており、そのため火には強いが、皮肉にもずっと欲していた水が最大の弱点となっている。「ジャミラが元は人間だったという事実を公表せず、あくまでも『怪獣』として葬り去れ」というパリ本部からの命令を受けた科学特捜隊による人工降雨弾攻撃には苦しみながらも耐えるが、ウルトラマンのウルトラ水流には耐えられず、這いつくばって国際会議場の万国旗を潰し、赤ん坊の泣き声に似た断末魔の叫びを発して絶命する。
いやー、私、子どもの頃、リアルタイムでウルトラマンを見ましたが、ジャミラが出た『故郷は地球』の回は、最後、涙をこらえるのに必死でした。下はジャミラの絶命シーン。
うん。ラモーの「一つ目巨人」はジャミラにこそふさわしい音楽ですな。