映画『始まりも終わりもない』、言葉にならない
一つ前の記事も書いたが、仕事が早くに終わると衝動的に映画を観に行くことある。この作品も、映画上映検索サイトで「ちょうどこれから近くで上映が始まる映画はないものか」と探して見つけた作品だ。場所は渋谷のシアターイメージフォーラムだった。
舞踊家・田中泯氏と映画監督・伊藤俊也氏による、舞踏×映画の前衛的な映像詩。セリフ、いや言葉はまったくなく、舞踊家・田中泯が、海、山、街なか、あらゆる場所での身体表現を通じて、人の生から死までを描く。
田中泯は1945年生まれ、来年70歳の老人だ。ところが、舞踊家として鍛え抜かれた体にまず目を奪われる。長年の表現活動が、体を研ぎ澄ますのだろうか。70歳で、こういう身体を維持したいものだ。
しかし、前衛的な映像作品って、感想を書くのがホント難しい。なんせ、セリフを排除した作品だけに、言葉で感想を表現すること自体、間違った方法なのだろう。たぶん理解するものではなく、感じるものだから。
あえて率直な感想を言うと、銀座の歩行者天国の真ん中を、素っ裸の老人(田中泯)が木の幹を抱えて歩くシーンがある。遠くからカメラで追っているのだが、周囲を歩く人々の好奇の目が向けられ、なんとも微笑ましいというか、気恥ずかしいというか。その昔、赤瀬川原平氏のパフォーマンス「東京ミキサー計画」も、こんな感じだったのだろうか。
また、雨の山の中、砂利採取場(?)でのシーンは、端から見ていると、いい歳のおじさんが泥まみれでのたうち回っているわけで、近所の住民がたまたま通りがかったら、びっくりしたに違いない。
とにかく、最近目にすることが少なくなった「前衛」という表現を、今なおストレートに追い求めている老アーティストたちの心意気に拍手したいと思った。
さて、音楽は大島ミチル氏。2008年、『眉山』の音楽で第31回日本アカデミー賞で最優秀音楽賞を受賞し、テレビドラマ『ショムニ』『天地人』など手がけたテーマ曲多数、売れっ子の作曲家だ。本作では、土着性を感じるミニマルな現代音楽で、田中泯氏の舞踊を引き立てていた。芸達者だなぁ。
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